「にこり」の修行
北名古屋市が誕生した1年後に国際交流協会が発足。その半年後に成人の日本語教室が始まり、その後小・中学生にも活動が拡大しました。27年度は小学校10校中9校、中学校は6校中4校に出前授業を、多くのボランティアさんの協力で行うことができました。
熊野中学校に2年半前の8月末に、タイから2人の男子が来日し9月から1年生に編入、私が担当となりました。片言の日本語しかわからなかったが、2人は真面目で努力家で人柄の良い生徒でしたので大好きになりました。
今年は2人にとって高校入試で試練の年であったので、学校の先生方は無論、私までが重圧を感じました。2月末の日本語教室最終日に、2人は直立不動の姿勢で「先生ありがとうございました。公立高校に合格できました」と満面の笑顔で合格証を見せてくれました。担任の女性先生も来室されてお礼を言って下さいました。大したお役に立っていないので恐縮しながら、目がウルウルときました。
いつでも君たちの味方だよ、困ったことがあればここに電話を下さいと、名刺を2人に渡しました。名刺の裏には真面目・正直・努力・健康・親孝行と書きました。親孝行については、お父さんは日本人だが、お母さんはタイの人なので、君たちのことを常に心配して下さっている。学校や外でどんな嫌なことや、辛いことがあったとしても、家に入る前には深呼吸をして、お母さんと顔があったら必ず「にこり」としてほしい。その修行が、いま君たちのできる最高の親孝行なのだと強調して、2年半続いた日本語教室の最後の授業を終えました。
退出時ご挨拶に伺うと、校長、教頭、窓口の教務主任、それに担任の各先生方から、あたたか味のある、過分で丁重なお言葉をいただき、余韻の残る思いを胸に、熊野中学校舎に、深く深く一礼して校門を後にしました。
日本語ボランティア 美越 宣男
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