来日研修生が観ている現在は
外国人への日本語教育ボランティアに私は毎週参加しております。そこで出会ったベトナム人の実習研修生らと一緒によく遊びに行きます。彼等の個性はそれぞれに異なりますが、純粋な若者たちが多いですね。3年間ほどの限られた研修期間に何かを学ぼうと懸命です。
この決して長くはない滞在期間に日本の良い面も悪い面も、しっかり見ていってほしいという思いが私にはあります。時折、彼らが自分の若いころと重なって見えることがあるのです。
四十年以上前、大学卒の初任給が五万円程の時代です。バイトでも一日働いて、やっと千円程度でした。そんなころ、私は会社を辞めて海外で働きながら旅行をしていました。カナダではガーデナー手伝いで、時給3ドル25セント貰っていました。当時の為替レートは、米ドルもカナダドルも1ドル300円位でしたので、時間千円位の賃金になります。このことは現在ベトナム人研修生が日本で体験しているのと似ていますね。
私が初めてアメリカへ行ってロサンゼルスの空港を一歩出たとき目にしたショックは計り知れませんでした。縦横に延びる片側五車線もあるフリーウエイ。テレビや映画でしか見ることもなかったスマートな大型高級車が颯爽と走る姿。どこがどう繋がるのか見当もつかないほど複雑に絡み合ったジャンクション。そこを、乗用車の背丈よりも高いタイヤを履いたトレーラーがダイナミックに煙を吐きながら昇って行く光景は、まるでタイムマシンで訪れた未来社会そのものだったのです。
更にカナダで驚いたのは、杖をする老婦人の多くが車を運転していたことです。未だ日本では女性ドライバーさえ多くなかった頃です。そして、道路にゴミが散らばっている様などには全く遇うこともなく、トイレはどこへ行ってもきれいなのに感心しました。
交通マナーも非常に良くて、割り込みをするような車はあまり見かけませんでした。片側三車線もあるような広い道路の横断歩道でもないところを私が渡ろうとすると、向こう側車線の車がずっと停止して待っていてくれるのには感激したものです。
そんな話を彼等にしたことがあります。すると彼等は言いました。「それって、私たちが今見ている日本ですよ」そう、彼等は日本に祖国の未来の姿を見ているのかも知れません。
日本語ボランティア 梅田 喜代一
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